みなさん、こんにちは!ブリヂストンの山田宏です。
今シーズン第2戦ルマン24時間レースの見所についてお話をしましょう。

1.2018-2019年第1戦ボルドール24時間を振り返って


今シーズンの開幕戦は、昨シーズンと同様、昨年9/14-16に開催されました。もう半年以上も前の事なので、なかなか思い出せないですね! 下記レポートをご覧になり、思い出して下さい!

第1戦:ボルドール24時間レースレポートはこちら

予選では#1 F.C.C.TSR Honda Franceが2位、#7 YART-YAMAHAが3位、と、安定した速さで両チーム共に今シーズン初優勝に期待が掛かりました。レースがスタートして、最初のスティントは#1 F.C.C.TSR Honda Franceと#7YART-YAMAHAが3位-6位とまずまずスタートで始まりました。しかし最初の波乱が4時間過ぎに訪れます。トップグループを走っていた#7 YART-YAMAHAが転倒!ピットに戻りマシン修復をするものの、20分以上掛かってしまい、再びコースインした時には25位までポジションダウン!
更に6時間過ぎには、#1 F.C.C.TSR Honda France のマシンにトラブルが発生!こちらは約8分間でレースに復帰したものの、やはり順位を17位まで落としてしまった。7時間経過時点で、#7 YART-YAMAHAが14位、#1 F.C.C.TSR Honda Franceが15位と厳しいレースとなりました。その後両チームは順調に周回を重ね、上位チームにも徐々にトラブルが発生し順位を上げていきます。
レース折り返しとなる12時間経過時には、 #1 F.C.C.TSR Honda Franceが5位、#7 YART-YAMAHAが6位へとポジションアップし、後半にトップとの差5周をどこまで詰められるかがポイントとなった。
その後は膠着状態が続くが、残り4時間となった所で、2位走行中のチームがトラブルでピットイン!3位に上がった#1 F.C.C.TSR Honda Franceは、2位との差も僅差となり、ピットのタイミングで2位が入れ替わる激しい争いとなった。その後残り2時間になる頃、4周差をつけてトップを快走していた#11 SRC KAWASAKI FRANCE(Pi)がマシントラブルでピットイン!一度コースインしたものの、再びピットインしてトップから脱落!遂に#1 F.C.C.TSR Honda Franceがトップに浮上し、#7 YART-YAMAHAが2位へ!#7 YART-YAMAHAがトップに迫るペースで追いかけ、終盤ピットインのタイミングで1度トップに出たものの、#1 F.C.C.TSR Honda Franceが逃げ切り優勝!#7 YART-YAMAHAが2位で我々としても海外ラウンドで初の1-2フィニッシュを達成しました。

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終盤には遂に#1 F.C.C.TSR Honda Franceと#7 YART-YAMAHAが1-2体制
チーム紹介をご覧ください。
FIM世界耐久選手権(EWC)サポートチーム

2.ルマン24時間について


ルマン24時間は、鈴鹿8耐と同じく1987年に第1回が開催され、一昨年40周年を迎えました。フランスは耐久レースの発祥の地だからか(19世紀後半に耐久レースが始まったようです。)、耐久レースが非常に人気あります。現在EWCの5戦/年間のうち、24時間レースを開催しているのは、このルマンと、昨年9月に行われたボルドールのみです。ちなみに、ルマンはパリから東南約200kmの所にある町です。
ルマン24時間レースというと、4輪のレースの方が有名ですね。4輪のルマン24時間では、グランプリコースと一般道を使って1周13.6kmという長いコースを使います。(今年は6/15-16に開催予定です。)
EWCでは1周4.185kmのグランプリコースを使用します。MotoGPも長年同じコースを使っていて、毎年5月に開催されます。

3.コースについて


このコースは、MotoGPでも長年使っているので、我々にとってはEWCの中では鈴鹿に次いで最も良く知っているコースです。
1周4.185kmのコースは、左4、右10ヶ所のコーナーからなり、メインストレートは450mとグランプリコースの中でも最も短い直線と言えます。

中低速コーナーがメインで、1周の平均速度もMotoGPで160km/hと、MotoGP開催コースの中では低い方です。(EWCのレコードタイムでは平均156.2km/hです)
短いストレートの後、右の高速コーナーがあり、その後すぐにシケインがあります。
その後は5,6の右コーナー、左の7コーナー、右の8コーナーとヘアピン状のコーナーが続きます。短いバックストレートの後、S字コーナーがあり、その後も右の11コーナー、左の12コーナーを経て、最終複合コーナーに戻ってきます。

コーナーのカント(路面の傾斜)が少ない所が多く、滑りやすい路面と相まって特にウェット路面では非常に転倒が多いコースです。
一昨年レース前に路面が改修されたので、グリップが上がりラップタイムも速くなりました。昨年は1年経って路面も安定した為か、コースレコードは2017年のタイムで、昨年はそのタイムを更新する事はできませんでした。

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4.タイムスケジュール


タイムスケジュールは、昨年とほぼ同様で4/18木曜日の10:00~12:00にフリープラクティスがあり、午後3:40から各ライダー20分間の予選1回目が行われます。4/19金曜日の10:10から2回目の予選が20分ずつあります。そして土曜9:40から45分のウォームアップの後、15時にスタートです。4/22日曜日15:00にゴールまでの24時間、今年はどんなドラマがあるのでしょう?日本との時差は7時間なので、日本時間では22時がスタート/ゴールです。

5.予選の見所


ルマンは我々がMotoGP参戦時もそうでしたが、天候の変化に悩まされるコースです。MotoGPでは5月の中旬に開催される事が多かったのですが、EWCは4月の中旬開催、さらに天候が読めない所です。
予選は各ライダー木曜日に1回、金曜日に1回ですが、このように天候がどうなるかわからないので、まず木曜日の予選はタイムアタックをする必要があります。しかも通常なら午後の方が気温は高いので、その点では木曜日の方が良い可能性もあります。予選から使用タイヤの本数制限が始まり、今シーズンは予選で6本、決勝で41本と分かれています。(昨シーズンまでは予選・決勝合わせて45本) 開幕戦のボルドール24時間では、路面改修が行われた為タイヤ本数規制は適用されなかったので、今回が初の新ルールとなります。昨シーズンまでは、予選でタイムアタックを最小限の周回で終えて、そのタイヤを決勝で使用していたのですが、今年は6本のタイヤを予選で完全に使い切る事になるので、予選アタックも多くなるでしょう。予選上位5位にポイントが与えられる事も相まって、予選は白熱する事でしょう。
予選でのタイヤの使い方も戦略ですが、上位チームは3人のライダーに、新品タイヤを1セットずつ与えるのではないでしょうか? その場合は予選1回目に新品タイヤを使用し、2回目はユーズドタイヤを使う事になります。
但し予選グリッドは、各ライダーのベストタイム3人の平均なので、ライダー/マシンのコンディションと、天候の状況で戦略も変わるでしょう。

6.決勝の見所


決勝は予選以上に天候の状況で難しさが左右されるでしょう。昨年は幸いにもウィーク中天気は安定していて、明け方の一番寒い時でも気温14℃路面温度15℃と、例年に比べると温かかったのですが、2016年などは、明け方の気温/路面温度が3℃と、極寒となりました。又この2年間レース中に雨は降らなかったのですが、低温で雨が降った時はタイヤ選択も戦略も難しくなるでしょう。

ルマンのグリッドは60台の出走となります。鈴鹿8耐は68台が決勝に臨むのですが、鈴鹿のコースは1周5.8kmあるので、全員がコースに出るとコース上の密度はルマンの方が多くなります。
しかも、ルマンはストレートが短いので、遅いマシンを抜くのはリスクが大きいでしょう。欧州は日が長いと言っても、3分の1以上は暗闇での走行となり、夜間走行でリスクを増やさずにタイムを落とさないかがポイントとなるでしょう。(24時間レースのポイントですね)
昨年F.C.C. TSR Honda Franceが優勝した時も、終盤17時間過ぎにトップが転倒、又開幕戦のボルドールも、残り2時間でトップがマシントラブルと、24時間レースではトラブルや転倒が無いチームは珍しく、逆に多少のトラブルがあっても挽回する事が出来るので、その時のチーム力が問われます。昨年優勝のF.C.C. TSR Honda Franceは24時間で25回ピットインをしました。ピットイン時のピットロード入口から出口まで、ピット作業を含め上位チームは50秒前後ですが、ちょっとした作業ミスでも10秒や20秒はすぐにロスしてしまうので、このピット作業もかなりのポイントとなります。
一昨年はレース中全く雨が降らず、終始ドライ路面だった事もあり、優勝チームの周回数は過去最高の860周を記録しました!(何と走行距離は3,600kmです!)昨年はセーフティーカーが3回入った事もあり、周回数は843周となりました。レース中にセーフティーカーが入った時は、燃費が大幅に向上するので、走行可能周回数が変わってきます。この辺りチームの戦略変更にも注目です。
現在の週間天気予報では、週末は降水確率10~20%、気温は最低9~11℃、最高19~25℃というところで寒くはなく、雨の心配もなさそうす。といっても、日本の天気予報とは精度は違うので、要注意です!過去の経験で言うと、ここも雲の動きが速く天気の変化が大きいのです。特にレース中に雨が降ったり止んだりしたら、ライダーにとって難しいのは勿論、タイヤチョイスも難しくなるので雨が降らない事を祈ります。

7.タイヤ


昨年9月の、今シーズン開幕戦ボルドール24時間から、冬の間に何度かテストを重ねて、タイヤ開発も進めています。ルマンでは3月の初めと4月上旬に合同テストがありましたが、両テスト共に雨が降り、ドライでは十分なテストが出来ませんでしたが、今回も新しいスペックを何種類か持ち込みます。課題である低温時に作動性が良く、かつ耐久性のあるスペックの開発を進めています。ルマンでの事前テストでは十分なテストが出来なかったので今週のウィークに入っても、テストを重ね状況を見ながら予選、レースタイヤの選択をする事になるでしょう。
今回2チームに対して、約700本のタイヤを持込みます。
上記にも書きましたが、24時間レースでのタイヤ使用本数は、決勝で最大41本と変更になりました。昨年は予選、決勝合わせて45本だったので、レースで使えるタイヤは少なくなりました。(フルウェットタイヤは除かれます。)
昨年優勝のF.C.C. TSR Honda Franceは25回ピットで26スティント。一昨年は上位3チームは26回ピットで27スティントでした。通常はリアタイヤの消耗が大きいので、フロントタイヤを2回通す事が多くなると思われます。27スティントとすると、リアタイヤを毎回新品を使用すると27本、残り14本のフロントで毎回2スティント走行すれば足りる事になります。但し状況と使用スペックによっては、リアタイヤだけ新品にした場合、バランスが崩れる事もあり、状況によっては前後タイヤ2スティント通しで使う事もあるでしょう。この辺りも状況を見ながら、チームと我々のエンジニアが話し合って決めて行く事になります。

画像3 決勝では25回以上のピットイン/作業が見込まれ、タイムロスのない作業が必要です。

8.最後に


昨年のルマンでは、F.C.C. TSR Honda Franceが日本チームとして初優勝と盛り上がりました。YART-YAMAHAは残念ながら転倒リタイヤとなってしまいましたが、今シーズン開幕戦のボルドールでは、1-2フィニッシュを飾っているので、今回も期待しましょう!

今回ルマンのレースは、日テレG+で生放送されます!日本時間の4/20土曜日22:00スタートですが、21:30~放映が開始され、翌日ゴールが22:00ですが、23:00まで連続25時間半の生放送です! 今回私も解説に呼んで頂いており、7人の解説陣で回すのですが、予定では23:00~25:00と18:00~20:00と2スティント担当します!後半はゴール前2時間なので、この時に我々のサポート2チームがトップ争いしてる事を期待しています!
日テレジータス(公式サイト)

またブリヂストンのHPでは、現地から速報をお届けします。予選から開始予定ですので、下記をご覧下さい。
EWC/鈴鹿8時間耐久ロードレース 速報

又FIM EWC公式ホームページでライブタイミング(順位とラップタイムが分かります)は見られますのでチェックして下さい。タイミングモニターを見ながら、TVを見るのがマニアの見方ですね!
EWC(公式サイト)

伝統のルマン24時間レース、ブリヂストンサポートチームの活躍を期待して下さい!