みなさん、こんにちは! ブリヂストンの山田宏です。
いよいよ鈴鹿8耐が目前となりました。そこで今回は今年の規則変更等について説明します。鈴鹿8耐はEWCの最終戦なので、勿論EWCの規則に従うのですが、EWCの規則も今年から変わっている部分もあり、又中には鈴鹿独自の規則もあります。
全体は下記「EWC(8耐)とは」のレギュレーションに書いていますので、もう一度ご覧下さい。
/2/8tai/about
今年又は今シーズンから変わった規則を中心に、上記に書いていないものを含み規則変更について少し詳しく解説します。
これらの規則について、まず我々に一番関係のあるところから説明させて下さい!

1. リム(タイヤ) *今シーズンからの変更
 今シーズンの規則変更で最も大きなものの一つが、リムのサイズ変更です。昨シーズンまではリムの最大幅がフロント:4インチ、リア:6.25インチで、リム径が16インチ以上(正確には400㎜以上)であれば良かったのですが、今シーズンからはフロント:3.50×17インチ、リア:6.00×17インチの1サイズに規定されました。(SSTクラスは公認車両のリムサイズですが、多くの車両は同じサイズです。)このリム径に合わせ、タイヤも当然17インチのみが使用されることとなります。
 この変更の理由は、EWCで使われるベース車(1000㏄のスーパースポーツ)の標準装着リムが、殆どこのサイズなので、この1サイズに固定して選択肢を狭める事によって、結果的にコストダウンに繋がる(可能性が高い)という事です。又リムの材質もアルミ合金に限られます。以前は殆どのチームが軽量でコストの高いマグネシウム製を使っていたので、この点もコストダウンに繋がるように変更されました。

2. タイヤ使用本数 *昨シーズンまでと同規則
 タイヤはレース専用のタイヤの使用が認められます。予選とレース中に使用できるタイヤの本数は、8時間耐久の場合最大20本と決められている。(鈴鹿で行われるトップ10トライアルは除く。)SSTクラスの場合は、8時間耐久で最大13本となっているが、鈴鹿8耐ではSSTクラスのタイヤ使用本数制限はありません。この本数には、雨の時に使用する、"フルウェットタイヤ"は含まれません。この"フルウェットタイヤ"は、タイヤメーカーが、そのトレッドパターン図をFIMに提出し、登録されたパターンのみが"フルウェットタイヤ"と認められます。ちなみに24時間レースでのタイヤ使用可能本数は、45本までとなっています。
 タイヤのコントロール方法は、チームに20枚のタイヤステッカーが配られ、予選、レース では、そのステッカーが貼ってあるタイヤのみが走行を許され、オフィシャルがチェックします。ちなみにタイヤステッカーの無いタイヤが使用された場合、1本につき1回のストップアンドゴーペナルティが課せられる場合があります。

fuel tanks.jpg  *多くのチームが2口タイプを採用               *ヤマハは今年から1口タイプを採用

3. 燃料タンク、給油装置 *今シーズンからの変更
 マシンのガソリンタンク容量は、最大24リットルと変更はないですが、給油口と給油装置の規則が今年(第2戦から適用)から変わっています。その為参加チームは新たに準備しなくてはならないので大変だったでしょう。
 燃料タンクキャップは、最大2つの開口部を持つクイックフィルタイプに変更しなくてはならないが、その口径が昨年までの最大76mm(3インチ)から最大50.8mm(2インチ)へと変更になりました。1つ口タイプ(ガソリン注入パイプの外側に、空気抜きがある2重のタイプ)の口径は最大78mmだが、中心部の燃料が通る部分の最大は50.8mmです。

refueling.jpg *2口タイプの給油タンク                    *1口タイプの給油タンク

 給油タンクに関しても規則が出来ました。昨年までチームによっては細長く、高いタンクを使っているチームが多かったですが、安全上の理由で、給油タンクのバルブ下端から、タンク上部までは120cm以下との規制が出来ました。よって多くのチームが今年規則に合致した新しい給油タンクを揃えています。
 ガソリンを速く満タンにする為に、重力を利用して高くしていたのですが、30リットル以上のガソリンを入れると、タンクと合わせ30kg以上になり、重心が高いとフラフラして危険という事です。
 この給油装置ですが、日本のチームは殆どのチームが2つ口のバルブを採用しています。1つの口からガソリンを入れ、もう一つの口から空気を抜くのです。欧州のチームでは、1つ口も多く今年ヤマハファクトリーは1つ口のタイプに変更しました。この1つ口タイプは、パイプが2重になっていて、中心の部分にガソリンが通り、外側のパイプから空気を抜くタイプで、F1も同じ1つ口バルブを使用しているそうです。同じヤマハのYARTチームは昨シーズンまでも1つ口タイプを使用していて実績がある事と、ガソリンタンクの形状から1つ口の方が良いと判断したようです。
 又ガソリン給油タンクを加圧してはならず、またガソリンを冷却しないよう、温度に関しても規制が加わっています。(外気温より15℃以上下げてはならず、かつ0℃以下はだめ) これは、ガソリンは熱膨張するので、低温にした方が体積が小さくなる(=多くのガソリンが入る)ためです。温度に関しては、MotoGPでは早くから規則化されていて、オフィシャルが非接触温度計でガソリンタンクの温度をチェックしています。規則の出来る前は、ガソリンタンクごと冷凍しているチームもありました!ちなみに24Lのガソリンタンクで、ガソリン温度が10℃変わると、約300cc体積が変化します!結構大きいですね!
 24Lのガソリンを、3秒足らずで満タンにしてしまうのですが、その給油口口径が、76mmから50.8mmへと小さくなり、面積で言うと約45%になってしまったので、かなり時間が掛かるようになったと思ったのですが、いくつかのチームに聞いた所、それ程変わらないまでになっているとの事です。

4. ピット作業(ピットロードでのヘルメット着用) *今シーズンからの適用
 これも安全に関する規則強化の一環です。ピット前の作業エリアで、マシンに直接作業出来るピットクルーの数は、1チーム4名と変更ありません。(ピットの中にマシンを入れた場合は、人数制限はありません。)給油担当(給油のみを行う)は4名に含まれず、その他に消火器待機要員1名を置く。この給油担当と消火器待機要員は、耐火スーツを着用し、ヘルメット、ゴーグル、グローブ等で全身を覆わなければならない。マシンを作業するピットクルーも、耐火スーツ又は綿のスーツで手足を覆われていなければならないと決められています。
 暑いなか、耐火スーツを着るピットクルーは大変ですね!
 またピット前のピットレーンに立ち入りを許可されたスタッフに関しては、今シーズンからヘルメットの着用が義務付けられました。これはオフィシャルや我々サービススタッフ、プレス、カメラマン等も同じです。このヘルメットにも規格が定められ、EWCの規則では欧州のヘルメットの規格、EN1078A、SNELL B95に合致したものとなっていますが、鈴鹿8耐では日本自転車競技連盟(JCF)の公認ヘルメットも追加されOKとなっています。

5. クラス・エントリー
 クラスに関しては、今シーズンからEWCとSSTの2クラスとなり(スーパーツインが廃止)、特別な車両が許可されるエクスペリメンタルクラスを、主催者が認める事が可能となっていますが、今シーズンのEWCでは採用されていません。SSTクラスは、ほぼ市販状態のマシンとなりますが、エントリー枠にクラスの割り振りはありません。レース結果、表彰はクラス別(SSTクラス)にも行われます。EWCクラスとSSTクラスマシンの見分け方は、ヘッドライトの色が白がEWCクラス、黄色がSSTクラスなので、すぐに見分けが付きますね。
 EWCでは最大70チームのエントリーが可能となっています。鈴鹿8耐に関しては、EWCレギュラーチーム(シーズン契約しているチーム)は無条件で出場が認められますが、鈴鹿8耐のみに参加するチームは、その権利を獲得する必要があり、前年度の鈴鹿8耐での成績と、今年の出場権利を獲得するためのトライアウトレースで、権利を獲得したチームに限られます。今年の鈴鹿8耐には、64チームがエントリーしています。今年はEWCレギュラーチームが10チーム(全てEWCクラス)。クラスの内訳は、EWCクラスが53チーム、SSTクラスが11チームとなっています。
 ブリヂストンのサポートチームは19チーム、お客様を含めると31チームがブリヂストンタイヤを使用します。

その他昨シーズンからの変更はありませんが、もう少し詳しく説明しましょう。

6. 予選・トップ10トライアル
 昨シーズンから予選のタイム基準が、ライダー全員のべストタイムの平均に変わりましたが、今年も同じです。鈴鹿特有の予選方式として、トップ10トライアルが行われますが、これも昨年と同じ方法です。
 予選はライダー青、黄、赤の3組に分かれ、金曜日の12時過ぎからそれぞれ20分間2回の計時予選が行われます。各ライダーのベストタイムを採用し、チーム3人(又は2人)のベストタイムの平均で予選順位が決定します。決勝への出走が認められるライダー(予選通過基準)は、そのライダーの所属する組のトップタイムから、110%以内のタイムをどちらかの予選で出していなくてはならず、チームに2名以上予選通過ライダーがいないといけません。(例えばトップが2分7秒であれば、2分19.7秒です。)その計時予選順位で11位以下は、その順位でグリッドが決定します。1位から10位のチームは、土曜日に行われるトップ10トライアルの順でグリッドが決定します。
 それでは土曜日に行われるトップ10トライアルのやり方をおさらいしておきましょう。
 予選で1位から10位のチームはトップ10トライアルに出場のライダー2名を選出します。(タイムは関係ありません。)
 トップ10トライアルの出走順は、①10位→6位のチーム順で、でタイムの遅かったライダー②10位→6位のチーム順で、タイムの速かったライダー③5位→1位のチーム順で、タイムの遅かったライダー④5位→1位のチーム順で、タイムの速かったライダーです。
 このトップ10トライアルで、2名のベストタイムが採用され、チームの予選順位となります。ライダーは上記順にコースインし、1周のウォームアップラップの後1周のタイムアタックを行います。20人が走行するので開始から終了まで時間が掛かりますが、条件の変化は考慮されません。開始前に降雨や、路面状況の大きな変化が見込まれる場合は、10台による計時予選に変更される事もあります。

7. 賞典
 正賞としては、EWCクラスが1位から10位まで、SSTクラスには1位から3位までにトロフィーが贈られます。優勝チームが表彰台で掲げる大トロフィーは、持ち回りでレース前に前年の優勝チームから返還されます。
 副賞としての賞金総額は2,000万円で、優勝賞金が1,000万円です!2位は200万円と格差はありますが、30位まで賞金が出ます。特別賞金として、SSTクラスは別に1位から6位までに(1位20万円)、ポールポジション賞(80万円)、1時間毎にトップのチームに各10万円の賞金が出ます。
 ユニークな所ではライダー2名登録のチームの最上位に「タッグチーム賞」(40万円)、決勝で最も順位を上げたチームに「ベストパフォーマンス賞」(20万円)、23歳以下のライダーを2名以上登録チームの最上位チームに「U-23賞」(20万円)
 これら賞金については、あまり知られてませんね。
 今年この大トロフィーを手にするチームはどこでしょう?