みなさん、こんにちは!ブリヂストンの山田宏です。
今シーズン第2戦ルマン24時間レースの見所についてお話をしましょう。

1. 2017-2018年第1戦ボルドール24時間を振り返って

今シーズンの開幕戦は、昨年9/16-17に開催されました。もう半年以上も前の事なので、なかなか思い出せないですね!下記レポートをご覧になり、思い出して下さい!
【レースレポート】2017‐2018年 EWC開幕戦 ボルドール24時間耐久レース

予選は#7 YART-YAMAHAが2位、#5 F.C.C.TSR Honda Franceが3位と、安定した速さで初優勝に期待が掛かりました。レースがスタートしても、序盤は#5 F.C.C.TSR Honda Franceと#7YART-YAMAHAが1-2体制を築き、好スタートを切りました。しかし最初の波乱を#7 YART-YAMAHAが襲います。3人目の野左根選手に交代した途端、マシントラブルにより転倒!野左根選手はピットに戻りますが、脳震盪の為ドクターストップが掛かり、マシンを修理するものの、トラブルが再発し、スタートから5時間半後に結局リタイアしてしまいます。
一方の#5 F.C.C.TSR Honda Franceは、好調にトップ争いをします。中盤からは#94 GMT 94(Ya、Du)との激しいトップ争いで、何度もトップに立ちます。トップで迎えた残り4時間となった頃、22回目のピットを終えた後に痛恨の転倒!修理をしてピットアウトするものの、6位となってしまいました。 第1戦を終わった後のポイントランキングは、#5 F.C.C.TSR Honda Franceが4位、#7 YART-YAMAHAは痛いノーポイントとなりました。

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序盤は#5 F.C.C.TSR Honda Franceと#7 YART-YAMAHAが1-2体制

#7 YART-YAMAHAは、ルマンからライダーが交代します。昨年日本から参戦した野左根航汰選手に代わり、今年は藤田拓哉選手が参戦します。昨年彼は全日本ロードのJSB1000に、YAMALUBE RACING TEAMから参戦し、ランキング4位となりました。 チーム紹介をご覧ください。
FIM世界耐久選手権(EWC)サポートチーム

2. ルマン24時間について

ルマン24時間は、鈴鹿8耐と同じく1987年に第1回が開催され、昨年40周年を迎えました。フランスは耐久レースの発祥の地だからか(19世紀後半に耐久レースが始まったようです。)、耐久レースが非常に人気あります。現在EWCの5戦/年間のうち、24時間レースを開催しているのは、このルマンと、昨年9月に行われたボルドールのみです。ちなみに、ルマンはパリから東南約200kmの所にある町です。
ルマン24時間レースというと、4輪のレースの方が有名ですね。4輪のルマン24時間では、グランプリコースと一般道を使って1周13.6kmという長いコースを使います。(今年は6/16-17に開催予定です。) EWCでは1周4.185kmのグランプリコースを使用します。

3. コースについて

このコースは、MotoGPでも長年使っているので、我々にとってはEWCの中では鈴鹿に次いで最も良く知っているコースです。
1周4.185kmのコースは、左4、右10ヶ所のコーナーからなり、メインストレートは450mとグランプリコースの中でも最も短い直線と言えます。

中低速コーナーがメインで、1周の平均速度もMotoGPで160km/hと、MotoGP開催コースの中では低い方です。(EWCのレコードタイムでは平均156.2km/hです) 短いストレートの後、右の高速コーナーがあり、その後すぐにシケインがあります。
その後は5,6の右コーナー、左の7コーナー、右の8コーナーとヘアピン状のコーナーが続きます。短いバックストレートの後、S字コーナーがあり、その後も右の11コーナー、左の12コーナーを経て、最終複合コーナーに戻ってきます。

コーナーのカント(路面の傾斜)が少ない所が多く、滑りやすい路面と相まって特にウェット路面では非常に転倒が多いコースです。
ただし昨年レース前に路面が改修されたので、グリップが上がりラップタイムも速くなりました。規則で路面が改修されたコースでは、タイヤの本数規制が無くなるので、昨年のレースではタイヤの本数規制は適用されませんでした。その為タイヤを毎回ピットイン毎に交換していたので、2スティント使用時の摩耗、耐久性のデータがありません。

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4.タイムスケジュール

タイムスケジュールは、昨年同様に4/19木曜日の10:00~12:00にフリープラクティスがあり、午後3:10から各ライダー20分間の予選1回目が行われます。4/20金曜日の10:15から2回目の予選が20分ずつあります。そして土曜10:25から45分のウォームアップの後、15時にスタートです。4/22日曜日15:00にゴールまでの24時間、今年はどんなドラマがあるのでしょう?日本との時差は7時間なので、日本時間では22時がスタート/ゴールです。

ルマンのレースは、今の所テレビ放送では見られないのですが、FIM EWC公式ホームページでライブタイミング(順位とラップタイムが分かります)は見られますのでチェックして下さい。
【FIM EWC公式ホームページ】http://www.fimewc.com/live-timing/

5. 予選の見所

ルマンは我々がMotoGP参戦時もそうでしたが、天候の変化に悩まされるコースです。MotoGPでは5月の中旬に開催される事が多かったのですが、EWCは4月の中旬開催、さらに天候が読めない所です。昨年は1週間早かったのですが、明け方の気温は非常に低くなりました。
予選は各ライダー木曜日に1回、金曜日に1回ですが、このように天候がどうなるかわからないので、まず木曜日の予選はタイムアタックをする必要があります。予選から使用タイヤの本数制限が始まるので、タイヤの使い方も戦略です。レギュレーションで24時間レースは、予選決勝を通して45本のタイヤが使用出来ます。

通常は予選でも新品タイヤの使用は、1回の予選で1セットに抑えると思います。1回目の予選は、スタートライダーが新品タイヤで出て行きます。予選グリッドは、各ライダーのベストタイム3人の平均なので、誰に新品のタイヤを使わせるかも戦略です。そしてタイヤ温存の為に、数周のタイムアタックで切り上げるライダーが多いと思います。

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3/28-29ルマンでの合同テストでのYART 藤田選手の走り

6.決勝の見所

決勝は予選以上に天候の状況で難しさが左右されるでしょう。昨年のレースでは、スタート時は気温15℃・路面温度20℃とまずまずのコンディションでした。しかし15:00のスタート時から気温は徐々に下がり、明け方には気温/路面温度共に8℃、とかなりの寒さになりました。
2016年のルマンでは、同じ時期ながら明け方には気温/路面温度が3℃と、真冬並みとなりました。
現在の週間天気予報では、週末は降水確率20~50%、気温は最低12~13℃、最高19~22℃と、昨年よりは寒くは無さそうです。といっても、日本の天気予報とは精度は違うので、要注意ですね!過去の経験で言うと、ここも雲の動きが速く天気の変化が大きいです。特にレース中に雨が降ったり止んだりしたら、ライダーにとって難しいのは勿論、タイヤチョイスも難しくなります。

ルマンのグリッドは60台の出走となります。鈴鹿8耐は68台が決勝に臨むのですが、鈴鹿のコースは1周5.8kmあるので、全員がコースに出るとコース上の密度はルマンの方が多くなります。

しかも、ルマンはストレートが短いので、遅いマシンを抜くのはリスクが大きいでしょう。欧州は日が長いと言っても、3分の1以上は暗闇での走行となり、夜間走行でリスクを増やさずにタイムを落とさないかがポイントとなるでしょう。(24時間レースのポイントですね)

昨年はレース中全く雨が降らず、終始ドライ路面だった事もあり、優勝チームの周回数は過去最高の860周を記録しました!ちなみに2016年はウェット路面にもなった為優勝チームは819周。2015年はドライでしたが833周だったので、昨年の周回数は一段と多くなったと言えます。(何と走行距離は3,600kmです!) 今年、雨が降らなければ、昨年の860周を超えてくる可能性があります。
レースに先立って3/28-29に行われた、2日間の事前合同テストは、天気が悪く1日目が雨、2日目も夕方になりドライで走れたものの、十分なテストは出来ませんでした。その中でYART-YAMAHAがトップタイム、F.C.C.TSRが5番手のタイムで終了しました。

7.タイヤ

昨年9月の、今シーズン開幕戦ボルドール24時間から、冬の間に何度かテストを重ねて、タイヤ開発も進めています。勿論今回も新しいスペックを何種類か持ち込みます。特に課題である低温時に作動性が良く、かつ耐久性のあるスペックの開発を進めています。3/28-29に行われたルマンでの事前テストでは、雨が多く残念ながらドライでの十分なテストが出来ませんでした。したがって今週のウィークに入っても、テストを重ね状況を見ながら予選、レースタイヤの選択をする事になるでしょう。 今回2チームに対して、約600本のタイヤを持込みます。
24時間レースでのタイヤ使用本数は、予選、決勝通して最大45本と決まっています。(フルウェットタイヤは除かれます。)
昨年のルマンのレースでは雨は全く降らずに、ノントラブルの上位3チームは、26回のピットインを行い優勝チームは860周を周回しました。決勝27スティントなので、予選で数周アタックしたタイヤを使っても、最低でも3セットのタイヤは2スティントを通しで使わなければなりません。
このあたりタイヤの使い方が、戦略としても重要となり我々はチームと一緒になってタイヤのスペック、使い方を決めて行く事になります。

昨年のルマンでは#7 YART-YAMAHAが、トップと同一周回の僅差で2位!#5 F.C.C.TSR Hondaが5位という結果だったので、今年はぜひ表彰台の頂点を期待しましょう!
と言ってももちろん耐久レース、まして24時間は何が起こるか分かりません。
24時間の長丁場、今年はどんなドラマが待っているのか?
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