みなさん、こんにちは!ブリヂストンの山田宏です。
鈴鹿8耐の興奮も冷めやらぬうちに(?)、EWCは2017-2018年シーズンが始まります。最終戦の鈴鹿8耐が終わって、1か月半で新シーズンが始まるというのは、チームや関係者にとってはかなり忙しいものとなります。更に8月29-30日には、ボルドール24時間の行われる、ポールリカールサーキットで合同テストが行われました。
昨シーズンは、鈴鹿8時間耐久レースが最終戦となった初のシーズンで、鈴鹿でEWCのシリーズタイトルも決定しました。2017-2018年シーズンも、最終戦を鈴鹿8耐として全5戦で争われます。

1.昨シーズン全体と、鈴鹿8時間レースを振り返って

昨シーズンは、今年と同じくボルドール24時間レースが開幕戦となり、9月17-18日で行われました。この時は、我々はF.C.C. TSR Hondaだけにテストとしてタイヤを供給していました。YARTとはタイヤ供給合意前でしたので、この時YARTは他社タイヤを使用して参戦していました。このレースでは、F.C.C. TSR Hondaが予選4位、決勝5位、YARTはマシントラブルの為リタイアという結果でした。
9月中旬という事で、昼間の最高で気温24℃、路面温度37℃と暑くはならず、夜中は気温、路面共に13℃という寒さで、ストレートが長い事もあって、タイヤの温まりに課題を残しました。YARTは残念ながらマシントラブルでリタイヤしてしまいました。15時間まで2位を走行していたので、8時間と16時間次の順位でボーナスポイントが9点付きましたが、今思うとこのリタイヤがタイトルには非常に痛かったですね!

今年に入り、2月にYARTへのタイヤ供給を発表しました。2月、3月にテストを実施しましたが、最初から我々のタイヤは非常に高評価でした。一方TSRも2月から本拠地の鈴鹿でテストを開始しました。寒い時期でしたが、昨年のルマン24時間、ボルドール24時間で、夜中の低温時のタイヤの温まり向上が課題だったので、その改良には丁度良いテストとなりました。
日本と欧州で、冬の間に課題への改良テストが出来たのはかなりの収穫があり、第2戦4月のルマン24時間レースに臨みました。

ルマンのレースでは、YARTが快調に21時間過ぎまでトップを快走!その後GMT94(Ya,DL装着)に抜かれてしまい、最後までデッドヒートの末20秒差で惜しくも2位!TSRは5位という結果で、我々も少し自信が持てました。 レース詳細は下記レースレポートをご覧下さい。
第2戦レースレポートはこちら

第3戦のドイツオーシャスレーベン8時間では、またしてもYARTはGMT94とのデッドヒートの末2位、TSRは序盤のトラブルを挽回して5位となりました。
第3戦レースレポートはこちら

第4戦は初開催のスロバキア8時間。このレースではYARTがポールポジションから、TSRが3番手からスタートし、序盤は1-2体制で快走したものの、5時間半過ぎにトップのYARTがマシントラブルでピットインし、結局4位。TSRも電気系のトラブルで修復作業が長くなり、21位という結果に終わってしまいました。
第4戦の結果、最終戦鈴鹿8耐はポイントが1.5倍になるものの、YARTがランキング3位で自力タイトル獲得の可能性は無くなり、TSRも5位でタイトルの可能性は無くなってしまいました。
第4戦レースレポートはこちら

最終戦鈴鹿8耐は、ヤマハファクトリーが見事に3連覇を達成。チームグリーンが昨年に続き、同一周回で2位、F.C.C. TSR Hondaが最後まで2位争いをして3位となりました。僅かながらタイトルの可能性を残したYARTは、タイトル争いの2チームよりは遥かに速かったのですが、5位に終わり残念ながら年間3位で終わりました。F.C.C. TSR Hondaはランキング4位となりました。ブリヂストンユーザーの12連覇が達成でき、1位から10位まで独占と、我々にとって過去最高の結果となりました。
第5戦レースレポートはこちら

2. 今シーズンのスケジュール、参戦チーム

今シーズンのスケジュールが、8月末に発表されました。基本的には先シーズンと同じ開催地で、全5戦も変わりません。スロバキアとオーシャスレーベンの順序が変わった位です。
2017/2018年シーズンのスケジュール(レース日)
Rd.1 ボルドール 24時間  2017.9.16-17
Rd.2 ルマン 24時間  2018.4.21-22
Rd.3 スロバキア 8時間 2018.5.12
Rd.4 オーシャスレーベン8時間 2018.6.9
Rd.5 鈴鹿 8時間 2018.7.29

今週のボルドール24時間には、59チームがエントリーしています。内訳はEWC:31チーム、SST:26チーム、STW:2チームです。 今シーズンはフル参戦の契約をしているチームが、33チームと過去最大数となっています。(内訳はEWCクラスが19チーム、SSTクラスが14チームです。但し鈴鹿8耐への出場は義務ではないので、何チームが来日するかは未定です。) チームの国籍は12ヶ国、ライダーの国籍は17ヶ国と、国際色豊かになりました。フル参戦のうち、ブリヂストンの市販タイヤV02を使用してくれるチームが2チーム(昨シーズンは1チーム)、ボルドールにスポット参戦する市販ブリヂストンユーザーが3チームあります。

3. 今シーズンのレギュレーションに関して

現段階ではレギュレーションが発表されたばかりなので、詳細のチェックは出来ていませんが、タイヤに関しては使用できるのは17インチのみに限定されます。この規則はリムとして明記されており、リム径が17インチのみ、リム幅がフロント3.50インチ、リア6.00インチに限定されるのです。(昨シーズンまでは、リム径が16インチ以上、リム幅は最大フロントが4インチ、リアが6.25インチでした。) これは現在、EWCのベースとなるほとんどのスーパースポーツバイクの標準装着のサイズです。標準装着と同じ1サイズにして、コスト増加を抑えようというものです。ちなみにリムの材質に関しても、WSBや全日本と同様に、コストの面からアルミニウム製に統一される事になりました。

4.ポールリカールサーキットについて

このポールリカールサーキットは、南フランスに位置し、マルセイユの東約40km、地中海から15kmほど北に入った山の中にあります。
コースは1970年に完成し、1971年から1990年までF1のフランスGPが開催されました。又1973年にオートバイの世界グランプリが開催され、1999年まで続いきました。(この時は現在のストレートエンドから、バックストレートに入るショートコースを使用。)
1980年には、オートバイのボルドール24時間耐久レースが開催され、1999年にオーナーが変わり2001年にはトヨタと提携し、2002年にハイテク・テストトラックとして生まれ変わりました。
コースレイアウトを色々変える事が出来、全長826mから5861mまで実に167種類のコースレイアウトが取れるという。またコースへの散水設備があり、ウェット路面でのテストも可能。我々も2004年あたりに、MotoGPのウェットタイヤ開発テストを行ったこともあります。 2009年に一般にオープンとなり、2015年にEWCのボルドール24時間耐久レースとして復活しました。 EWCで使うコースは全長5.791kmで、ストレートが1.8kmあります。MotoGP開催コースも含めて、最もストレートが長いコースです。 右8、左5のコーナーからなり、EWCのレコードタイム1'57.253(2015年予選時)での平均速度は177.8km/hと高速サーキットです。レース中の最高速度は、昨年340km/hを記録しています!ちなみにレース中の最高速度は鈴鹿8耐でも通常は297km/h程度なので、その速さがわかるでしょう。
またベストラップでの平均速度を比べると、ポールリカールの次に速いのがスロバキアリンクで171.7km/h、以下鈴鹿166.3km/h、ルマン157.4km/h、オシャースレーベン153.2km/hとなります。
コースの路面のグリップは、ヨーロッパの中では中間的でしょうか?イメージは、ルマンよりは良く、スロバキアリンクよりは劣るという感じです。タイヤへの厳しさは、それほどでもありません。

5. 予選、決勝の見所

タイムスケジュールは昨年と同様で、木曜日の午前中に2時間のプラクティスがあり、午後から(16:20~!)各ライダー20分ずつの予選1回目が行われます。金曜日は午前中に予選2回目が行われ、グリッドが決定します。24時間レースでは、3名のライダーに、1名のリザーブライダーの登録が認められており、予選はこのリザーブライダーも含め4組の予選が行われます。ライダーは色分けされた腕章を付け、青-黄-赤-緑(リザーブ)の順で行われます。
ポールリカールのコースは、昨年から路面改修も行われていないので、タイヤ使用本数制限が適用されます。24時間レースでは予選、決勝で使えるタイヤは45本です。(WETタイヤは除く)
24時間耐久レースでも、ピットインのタイミングは燃費の問題からほぼ1時間毎です。昨年の上位チームは26回ピットでした。26回ピットの27スティントなので、毎回タイヤを新品にしようとすると、54本必要なのでとても足りません。予選からタイヤの使い方が戦略として大事になります。
今年の鈴鹿8耐では、予選、決勝で20本のタイヤが使用できましたが、上位チームはレース8スティント全てに新品を使用するために、予選は3人×2回を4本のタイヤで回したチームが殆どでした。
24時間ではそもそもレース用にも、毎回交換では不足するので、昨年の状況を見ると、予選のタイムアタックを数周で終えてタイヤを温存し、そのタイヤをレースにも使うという作戦が多かったようです。
但し予選中にも、レースに向けたセッティングをしたい場合が多いので、その場合は1セットのタイヤを使い回す等の工夫が必要です。
予選では3人の平均タイムなので(リザーブライダーは除く)、どのライダーも良い状態のタイヤを使って良いタイムを出したいので、予選では天候の状況も考えて、タイヤのスペックや使い方も重要です。
これらチーム力とは別に、ライダーの速さが求められるのは勿論です。1スティント25~27周すると思われるので、1周で0.5秒の差があると1スティントで10秒以上の差が付いてしまいます。
またこのコースでの夜間照明は、鈴鹿やルマンと比べて暗いという話です。しかし深夜~明け方でも、昨年の優勝チームは、ラップタイムの低下は1秒程度でした!疲労も溜り、暗い深夜をスムースに切り抜けられるかが大きいと思います。

6.今シーズンのサポートチーム内容

今シーズンも昨年と同じ2チームのサポートを継続します。
#7 YART-YAMAHA
 ライダーは昨年と同じで、ブロック・パークス、野左根航汰、マービン・フリッツの3人です。野左根はフル参戦2年目の今シーズンは、コースにも慣れて更なる飛躍が期待されます!(今週のボルドールは、昨年走ってないので初です。)
マシンも昨年と同様、ファクトリー体制のYZF-R1です。ブリヂストンを初めて使用した昨シーズン、トップと僅差の2位表彰台を2回獲得し、ランキング3位となったので、今年は初優勝とタイトル獲得が期待されます。
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#5 F.C.C. TSR Honda France
EWCフル参戦3シーズン目となり、今年はホンダフランスのサポートが付き、チーム名にもフランスが入りました。
第2戦からは、カラーリングもマシンも若干変わるようです。ライダーは昨シーズンのメンバー、ジョシュ・フック、アラン・ティシェ、アルトゥロ・ティゾンに加え、ホンダエンデュランスチームから移籍した、フレディ・フォレイが加わります。
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7.タイヤ

ポールリカールでは、8月末に2日間の合同テストが行われました。YART、TSRも参加して、タイム的にはYARTがトップタイム、TSRが3位で終了しました。この時は勿論昼間だけのテストで、気温は26~31℃、路面温度は32~48℃と暑いコンディションでのテストでした。
昨年のレースでは昼間の暑い時でも気温24℃、路面温度37℃で、夜中は気温、路面共に13℃と、かなり寒くなる状況で、低温時のタイヤの温まりが問題となりました。低温時のタイヤの温まりは、今回のテストでは確認できなかったのですが、今年の課題として取組み、4月のルマン24時間では改良効果も確認できました。昨年TSRは、ボルドールまでは16.5インチを使用したのですが、ルマンからは17インチに切り替えたので(YARTも17インチでした)、今週のボルドールには、鈴鹿8耐まで戦ったスペックをベースに、コンパウンドを最適化して準備しています。 ドライ用約350本、ウェット用約150本の合計約500本のタイヤを搬入します。
週末の天気予報は、今週に入って少し悪くなり、土曜日は雨マークになりました!気温も週末にかけて下がるようで、土日は最低気温10℃最高気温20℃と、結構寒そうです。

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8. タイムスケジュール

今回は火曜日に練習走行があります。そして公式スケジュールは木曜日の午前9:30から2時間のフリー走行。午後16:20から予選1回目があり、20:30からナイトプラクティスが1時間あります。 金曜日は、9:40から予選2回目が行われ、午後はほかのサポートレースのスケジュールとなります。 土曜日の15:00が決勝レーススタートとなりますが、朝8:45から45分間のウォームアップ走行があります。 そしてゴールは日曜日の15:00です。日本との時差は7時間なので、日本時間では9/16(土)の朝8時スタート、9/17(日)の8時ゴールです。 今週のレースも、テレビ放送では見られないのですが、FIM EWC公式ホームページでライブタイミング(順位とラップタイムが分かります)は見られますのでチェックして下さい。
http://www.fimewc.com/live-timing/

またブリヂストンモータースポーツのHPでは、現地から速報をお届けしますので、下記をご覧ください。
速報はこちら

今週末も、ブリヂストンタイヤ装着チームの活躍に期待し、応援よろしくお願いします。