タイヤと路面の関係をコントロールするのがアクセルやブレーキだったよね。その2つに比べてクラッチ操作自体は繊細な操作の必要性は少ないだろう。でも他の操作が全てうまくいってもクラッチ操作がキチんとできなきゃ、スムーズなクルマの動きが実現しないばかりか、挙動が乱れてスピンしたり、クルマが壊れる原因になることが多いんだ。クラッチ操作とシフト(ギア)操作は「つきもの」だけど、今回はクラッチ操作の基本を教えよう。

クルマが加速しているときはシフトアップの早さがタイムアップに直接関わってくる。キミよりもボクのシフトアップにかかる時間が0.1秒早いとしよう。1周に20回のシフトアップが必要なら、それだけで2秒のタイムアップができるわけだ。だけどちょっと待てよ。シフトアップのたびにタイヤが"キャキャッ"と鳴いたり、ダッシュボードが"ダン、ダン"と振動していたら、それはクラッチミートが激しすぎる証拠だ。エンジン回転とタイヤの回転を結合させたそのとき、タイヤの回転とスピードが合っていないんだ。クラッチミートのタイミング、つなぎ方と適切なギアで、2つの回転を上手くあうように調節しないと、エンジンやタイヤだけじゃなく、クラッチ、ミッション、ギア、ドライブシャフトなど、いろんな間接部品に障害を与えてしまうぞ。スパッとクラッチを切ったら、スピードとタイヤ・エンジン回転と適切なギアを合わせたところでクラッチを繋げる。詳しくは次回のヒール&トゥで披露するけどね。

シフトダウンのクラッチ操作も丁寧にする必要がある。シフトアップと違うのは、減速中だから、クラッチ・シフト操作の早さとは無関係。丁寧な操作に専念しよう。加速体制に入る前に適切なギアに入っていればいいことなんだ。でも、シフトダウンでは丁寧な操作を忘れると、マシントラブルばかりか、スピンやアクシデントを招くこともある。スピードに対して、エンジンの回転が足りない状態でクラッチをミートすると、急にタイヤ回転も少なくなり、そのとき出ているスピードと合わなくなってタイヤの回転が一瞬止まり(=タイヤロック)、スピンを起こす。逆にエンジンの回転が多すぎると、タイヤが余計に回ってしまうため、一瞬加速してしまう。どちらにしてもコントロールを失う原因だよね。

クラッチ操作の大事なところは、
第一に丁寧な操作/それができてから素早い操作を/シフトダウンにはより丁寧な操作を!

①まず、クラッチミートのタイミングを知る。
クラッチペダルを踏みこんで戻していくとき、どの辺りでクラッチがつながるか、そしてそのポイントまですぐにもっていけるか。

②隠しワザ"半クラッチ"を使う。
クラッチをつなぐとき、振動やタイヤ音が出ていたら、その対策案として"半クラッチ"を使ってみよう。といっても、長い間半クラにしているわけじゃない。クラッチミートの瞬間に左足をほんの一瞬だけ止めてあげるんだ。驚くほどスムーズにつながるようになる。

レーシングドライバーたちのクラッチ操作は、まさにシルキースムーズ。操作にチカラをいれても速くなるわけじゃないからね。力まずに、スムーズに。ストリートで助手席のパートナーのあたまが前後しなくなれば第1段階はオッケー。サーキットでの走行でもクルマやタイヤがギクシャクしなくなればペダル操作はキマッてきた証拠だ。

クルマって数えきれない部品があるなかで、人間が操作できるのはステアリングとギアシフト、そして3つのペダルだけなんだよね。だから、貴重な操作のなかで、タイヤと路面の関係を察知しながら、クルマをコントロールするのが大事。クルマに言うこと聞かせるだけが操作じゃない。クルマの動き、つまりタイヤと路面の関係をこれらを通じて察知し、合わせてあげる。それぞれの限界でコミュニケーションを図る、それがスポーツドライビングだね。

さて、次回は3つのペダルをフルに使ったシフト操作でヒール&トゥをバッチリ決めよう!