ドライビングポジションやステアリング操作、ペダルワーク、シフトワークと徐々に上達してきた頃だろう。さて今回は操作項目の最後の項目、「ブレーキング」だ。ブレーキングってクルマを止めること?うん、その通り。でもね、クルマを止めるだけじゃない、曲げるためのブレーキングってヤツもあるんだ。これをマスターすればキミも素晴らしいドライバーになることうけあいだ。

さてブレーキングってそれほど重要なものなんだろうか?ボクは小学生のころ、自転車がとても好きだった。もちろん、スピードもかなり出してたね。そんなボクのハードな乗り方に耐えられなくなったブレーキは「ブチッ!」という音とともにブレーキワイヤーが切れて「ウワーッ!」 そのまま電柱に... 止まれなくなるというよりフル加速に思えるほど怖かったなぁ。クルマも時速200キロで走っていてブレーキが全く効かなくなったら...想像しただけで怖いよね。ちなみに新幹線は、駅に到着する5キロ手前から減速をはじめるんだって。普段あまり重要視していないブレーキだけど、かなり大事なモノなんだ。

スポーツドライビングのなかのブレーキング。加速Gよりも高い減速Gをコントロールするのは至難の技だ。つまり、ゼロ発進から時速200キロまで加速するより、時速200キロから制止するほうが時間が短い。短い時間のなかで、減速Gに耐えながら、タイヤのグリップ力を最大限に使い制動していく。実際にやってみると成功させるのは大変だゾ。クルマを止める大切さやポイントについては第4回のペダルワーク~ブレーキング編を参考にしてほしい。今回はその先にあるブレーキングからコーナリングへの移り変わりを教えよう。


実はタイヤにはタテとヨコのグリップが別々に存在してるんだ。タテのグリップとは

1.加速を受け止めるチカラ
2.減速を受け止めるチカラ

それに対しヨコのグリップとは
1.コーナリングを受け止めるチカラだ。このタテ、ヨコ別々のグリップが100ずつあるとしよう。その場合、タテで100使ってしまったらヨコはゼロになってしまうのがタイヤのグリップの方程式なんだ。逆に考えるなら、ヨコで100使ってしまったら、タテはゼロになってしまう。つまり...

タテ+ヨコ=100が限界であり、タテ+ヨコ=200にはならないんだ。

ということはフルブレーキング時に起こっている現象は
タテ100+ヨコ0=100
ってことになる。つまり、"フルブレーキング中は曲がらないって"ことなんだ。荷重移動にこだわりすぎてフルブレーキング時にステアリングを切るキミ、ちょっと間違ってるぞ!

速度一定でコーナリングしている(定常円旋回)ときは
タテ0+ヨコ100=100
になる。だから限界のコーナリング中にむやみにアクセルを踏んだり、ブレーキングしたりすると、タイヤはグリップを失ってアウト側にはらんでいってしまうんだ。

そこでベストなブレーキングからコーナリングへの移り変わりをタイヤのグリップで表現すると
タテ100+ヨコ0=100

タテ90+ヨコ10=100

タテ80+ヨコ20=100
...

コーナーの中盤であるクリッピングポイント付近。減速から加速に移り変わる瞬間は
タテ0+ヨコ100=100
立ち上がりでアクセルを開けていくと
タテ10+ヨコ90=100

タテ20+ヨコ80=100
...

コーナリングが終わり、フル加速体制に入ると
タテ100+ヨコ0=100
となるんだ。どうだい?少しは理解できたかな。これを文章で表現すると進入のストレートでブレーキに集中

コーナーが近づいてきたらブレーキを踏む力を少しずつ弱めながらクリッピングポイントへ向かい

クリッピングポイントから徐々にアクセルを開け始め

コーナリング終了時にアクセルが全開
といったカタチになる。もちろん、そのコーナーの形状や路面の傾斜、前後のコーナーとの距離などによって操作の方法は変わることになる。しかし、物理的には上記の方法がベストだ。よくある間違えとしては

1.荷重移動にこだわりすぎて、フルブレーキング時(タテ100+ヨコ0=100)にステアリングを切ってしまう
2.アクセルオンを早くしたいためにクリッピング付近(タテ0+ヨコ100=100)からアクセルを全開にしてしまう
いずれにしてもタイヤの限界を超えてしまう操作をしているのでアウトにはらむことは避けられない結果となってしまうんだ。

どうだい、ブレーキングからコーナリングへの移り変わりって結構難しいだろ?ボクたちレーシングドライバーはフルブレーキングからクリッピングへのドライビング操作がウマいってわけ。もちろん、その間にタイヤの持っている性能をフルに引き出し、かつ超えないようにコントロールしながらやっているんだ。

さて今回はだいぶ難しい内容だったね。もちろん、これを練習しようと思ったらストリートじゃ危なくってできない。ジムカーナやサーキットイベントでムリをせず、少しずつマスターするのがイチバン。ポテンザドライビングレッスンやポテンザサーキットチャレンジはオススメだぞ。

さぁこれで主な操作項目は終了。次回からは具体的な走り方を教えちゃうぞ!