13-1.jpgそれが今回のテーマ、「複合コーナリング」だ。S字は右に左にといったクルマにかかる力が左右に連続するよね。対して「複合」は"右コーナーの後、さらに右コーナーがある"ようなコーナーのことを言うんだ。もちろん、コーナー間の距離や弧は千差万別。ちょっと走っただけではアクセルを踏むべきか、それともステアリングを切るべきか、わからないことが多い。つまり、難しさも増すってことだ。日本で有名な複合コーナーは鈴鹿サーキットのスプーンコーナー。2つのコーナーの結び方やコーナリングスピードの違いで、大きくタイムが変わってくる。そんな複合コーナーの走り方をみんなに教えよう。

今回のテーマである「複合コーナー」を次のように定義しよう。
●「複合コーナー」とは複数からなる同じ方向にいくコーナーである
たとえば、右コーナーの次はさらに右へとなる、つまり2回以上続けて右に曲がるコーナーということだ。
さて、基本的なことを思い出してみよう。コーナリングには低速、中速、高速、そしてS字があったよね。上記の「複合」の定義からすると、Gが右に左に移り変わることはないからS字の走り方は考えないことにしよう。となると、低速、中速、高速それぞれのコーナーが同じ方向に組み合わさったものになる。低速→低速、低速→中速、中速→中速、高速→中速など、組み合わせの可能性はいくらでも出てくるぞ。
それではいくつかのパターンを上げながらそれぞれの走り方を説明しよう。

1.同じRで2つの間隔が離れている連続コーナー
例えば、90度コーナーが2つ続いているとしよう。そしてコーナーとコーナーとの間が50メートル離れていると想定。この場合、走り方は次のようになる。図1を見ながらイメージしてみよう。
A.1つ目のコーナーを通常のアウト・イン・アウトで走行
B.通常通り立ち上がり、2つ目のコーナーへ向かう
C.2つ目のコーナーを通常のアウト・イン・アウトで走行
みんな気づいたかな?いわゆるいつものコーナリングを2回しているよね。つまり、複合とはいってもコーナーとコーナーの距離がある程度離れている場合は、通常のコーナリングを2回するだけ。その基準は直線区間にある。ステアリングを直進状態でフル加速できる距離があればとってもシンプルだから、難しく考えることはなにもないんだ。これはスポーツランドSUGOのハイポイント、レインボーコーナーにもいえることだ。

2.同じRで2つの間隔が短い連続コーナー
例えば90度コーナーが2つ続いているが、その間の距離が少なく、1つ目のコーナーのあとにすぐ2つ目のコーナーがくる場合。図2を参考にしてみよう。
A.1つ目のコーナーを通常のアウト・イン・アウトで走行
B.2つ目のコーナーに向け、アクセル開度を約半分のまま(ハーフアクセル)、一定のRをキープ
C.ブレーキングせず、そのまま2つ目のクリッピングを通過し、通常通り立ち上がる
コーナー間の距離がせまいときは直線区間がなくなる。よってアクセルを全開にできなくなってしまうよね。もちろん、アクセルをおもいっきり踏みこんでしまったら、2つ目のコーナーに対してクルマは行き過ぎてしまい、クリッピングもとれなくなってしまう。それなら、いっそのこと2つのコーナーを"1つ"に見たててコーナリングしてしまえばいいんだ。まるでコンパスを使ったかのように、2つのコーナーを弧で結び、キレイなRをつくってあげる。長いコーナーを一定の速度で曲がり、立ち上がっていけばベストなコーナリングができる。ツインリンクもてぎの第1~第2コーナーがこれに近いぞ。

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13-3.jpg3.1つ目が小さく、2つ目が大きいRの連続コーナー
次は大きさの違うコーナーの組み合わせ。最初のコーナーは比較的キツく、後に緩いコーナーがある場合だ。コーナー間の距離が広い場合はそれぞれのコーナーで通常通りのアウト・イン・アウトをとればいい。よって図3ではコーナー間の距離を小さくしてより難しいタイプで説明しよう。
A.1つ目のコーナーは通常のアウト・イン・アウトで進入
B.2つ目のコーナーに向け、アクセル開度を約半分のまま(ハーフアクセル)、一定のRをキープ
C.ステアリングを直進状態に徐々に戻しながら、アクセルを全開にする
少し気づいたかな?2つのコーナー中間までは"同じRで2つの間隔が短い連続コーナー"と一緒だ。緩いコーナーにさしかかったらそのRに合わせて与えた舵角を緩めていく。アクセルを踏んでいけば自然にアウトにはらんでいくから、とても走りやすい。胸のすくような気持ちのいいコーナリングができるはずだ。このときのポイントはアクセル全開の位置をできるだけ早くすること。それにより、次のストレートの加速がだいぶ違ってくるからね。ツインリンクもてぎの第3~第4コーナーに似ているね。

4.1つ目が大きく、2つ目が小さいRの連続コーナー
さて、コーナリング最大の難関にやってきた。上記の「3.」とは逆のパターンで、最初は緩く、後がキツくなるコーナー。このタイプの複合コーナーは世界中のレーシングドライバーたちにとっても最もハードでエキサイティングで難しいところ。なぜなら、ここでスピン、アクシデント、オーバーテイク等が起こり易いからだ。さて、走り方を伝授しよう。
A.ブレーキをめいっぱい遅らせ、1つ目のコーナーに進入



B.1つ目のクリップはつかず、長めのブレーキングで2つ目のコーナーに照準を合わせてブレーキング
C.しっかりと向きを変え、通常のコーナリングで立ち上がる
どうだい?最初のステップからして他のコーナリングとは違うよね。考え方としては、1つ目の長く緩いコーナーを「ちょっと曲がってる直線」と捉え、ブレーキングする場所として使うんだ。狙う先はあくまでも2つ目のコーナー。だから1つ目はラインを少し大きめにとり、速度をのせながら、"突っ込み重視"のブレーキング+コーナリングとなる。このドライビングの仕方だと速度が高い状態で、しかも横Gがかかったままブレーキすることになるよね。その結果、4輪にかかる荷重が不安定になり、姿勢変化や挙動変化が起きやすい。ブレーキングによるタイヤロックやアンダーステア、オーバーステア現象が起きてコースアウトやスピンに陥りやすくやるんだ。難しさがわかってくれたかな?でもね、リスクの高いこの複合コーナーだからこそ、レーシングドライバーたちはウデの見せ所として、激しい走りや熱いバトルが展開されるわけなんだよね。突っ込む勇気、リスキーなコーナリング、すべてがうまくハマらないとキマらないのがこの複合コーナリングだ。

さあ、一番の難所だった複合コーナリングが一段落したね。難しい分だけ、しっかりとしたマシンコントロール、つまりタイヤをコントロールする能力がなければ速く安全に走ることはできない。これらを克服するにはあせらずに時間をかけてたくさん走ることしかないんだ。さあみんなもアタマとカラダをフル活用してサーキットに行こう!次回は荷重移動についてのお話しだ。

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