第6回 富士スピードウェイ <その1>
山野哲也 (ジムカーナ&レーシングドライバー)
日本のサーキットの中では老舗中の老舗の富士スピードウェイ。76、77年にはF1が開催されたこともあるんだ。1コーナーの先にあった、通称「すりばちバンク」と呼ばれた30度バンクがとってもスリリングだったんだけど、74年以来使用されていないんだ。それでも多くのモータースポーツファンの間では語り継がれているくらい強烈なバンクだった、らしいよ。
最寄りのインターは東名高速道の御殿場で、東京から約1時間半で行けることもあり、関東周辺のファンなら1回か2回は訪れたことがあると思う。雨や霧の時が多いけど、快晴の時に見える富士山の清々しさは最高だ。
日本一の富士山が近ければ、速度も日本一! ストレートは約1.5kmもあり、国内では一番スピードが出るサーキットだよ。
ホームストレートは、おそらくほとんどのクルマが5速に入って、リミッターが当たる。シビッククラスではレース仕様だと、220km/hぐらい出るんだ。速いスカイラインGT-Rだと300km/hぐらい出るという強烈さ。また、他のサーキットに見られないスリップ合戦が楽しめる。それも自分の前に1台いるよりは2台、2台いるよりは3台いた方が効果が高く、よりパスしやすくなるんだ。レースでは、ラスト1周で6位だったクルマが、チェッカー時に1位になれちゃうぐらいその効果は大きいんだよ。だから、残り周回から逆算してレースを組み立てる必要もあるんだ。見る方も走る方も面白いストレートだね。
1コーナーのブレーキングポイントは、ヴィッツやスターレットなどの軽量マシンだと100m看板より奥になるけど、ハイスピードの重量車は当然手前になる。最初のうちは、余裕をもって進入するために、200m看板くらいからのブレーキングがいいだろうね。ここは、ウェットの場合、ブレーキングの段階で駆動輪がロックして、その影響でエンストすることもあるんだ。ストレートエンドのスピード約200km/hぐらいから、70km/hぐらいまで一気に落とすから、相当な減速Gになるよ。ブレーキング中に5→4→3→2とシフトダウンするんだけど(ほとんどのクルマが2速で進入)、オーバーレブしないように気を付けよう。ここは複合コーナーになってて、2個目のCPでほどよくインにつくといいね。そしてここでアンダーステア/オーバーステアを出さないこと。その先のストレートが遅くなるからね。できるだけクルマを真直ぐにして、加速方向にもっていくことが、タイムの出る走り方だ。
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次のコーナーはサントリーコーナー。通称Aコーナー。ここはフルブレーキングから2速に落とすわけだけど、ブラインドになっているから、慣れるまでに時間がかかるんだ。ブレーキングポイントの目印になるものもないので、走り込んだ経験がものをいうコーナーだ。ポイントは進入でしっかりアウト側にクルマを寄せること。コーナーの形がシケインっぽくなってるけど、左に曲がったら次の100Rに向けてフル加速する感じに、だね。また、アンダーが出やすいので、フロントタイヤのグリップを確認しながら曲がるようにしよう。あと、イン側の縁石は高く、乗せると挙動が不安定になったり、トラクションが不足したりするので乗せない方がいい。立ち上がりはトラクションをしっかりかけながら、ていねいにアクセルを踏んでいくようにしよう。
これぞコーナリング、と思わせるのが次に控える100R。日本のサーキットの中でもっともGのかかるコーナーだ。速度は高いけど、バンクがついてるからグリップはするので、クルマによっては全開のままクリアすることもできる。ここはプロでも大きなクラッシュをする可能性のある所で、それだけテクニックが求められるコーナーなんだ。速度もグリップも高いんだけど、それが抜けた時の反動が大きいので注意が必要だよ。あと、コーナリングスピードが高いぶん、度胸も求められる。慣れるまではなるべくインベタ気味に走って、アウト側に余裕をもたせてクリアした方がいいかもね。出口はクルマ1台分あけておいた方が無難。ギヤは3速、もしくは4速だ。あと、このコーナーでクルマのセッティングを合わせるエンジニアは多いよ。ここで前後バランスがきっちり決まってないと、速く走れない場合がかなりあるんだ。
100Rをクリアした後はヘアピンが待っている。進入ではなるべく右へクルマを寄せよう。ここは2速、おおよそ60km/hぐらいでクリアする。CPを必ずとり、インについた後はなるべくステアリングをこじらないようにして、アウトにはらんでいこう。この後の300Rを過ぎて、ダンロップコーナーまでは長いので、いかにクルマを加速状態にするかがタイムアップのカギだ。