第21回 鈴鹿サーキット

山野哲也 (ジムカーナ&レーシングドライバー)

設立は1962年。30年以上も前に造られ、日本でもっとも古い歴史を誇る鈴鹿サーキット。当初はホンダのテストコースとしてオープンしたが、今はF1をはじめ、各世界選手権レースも行なわれる由緒あるサーキットだ。30年以上の歴史のなかで、コースレイアウトやサーキット施設が徐々に変化して、現在の近代的なサーキットになった。それでも基本的な形は周辺の地形をうまく利用した、世界の中でももっともエキサイティングなコースといわれている。サーキット以外の施設も充実していて、遊園地、ホテル、温泉、キャンプ場、結婚式場など、総合レジャーランドとして確立。国内で唯一電車で行けるサーキットでもある。

 ホームストレートはゆるやかな下り勾配で、天気のいい日は1コーナーの先に伊勢湾が見える。200km/hオーバーのスピードで、まるで海に向かって走っていくような感覚だ。ギヤは当然5速。

 1コーナーは、かなりのハイスピードコーナーだ。ブレーキングしつつ4速にシフトダウン。その後一瞬アクセルを全開にし、続く2コーナーへアウトにはらみながら再びブレーキング。ギヤは3速へ。2コーナーはインをナメるようにして立ち上がってS字に向かおう。ここは2種類の走り方があり、ドライバーによっていろいろ。もうひとつの走り方は、1~2コーナーをひとつのコーナーとして考える場合だ。その場合は1コーナーでのブレーキングを持続したまま2コーナーへアプローチする。もちろんギヤは1コーナー手前で4速、2コーナー手前で3速にダウンする。このどちらもポイントとなるのは、2コーナーで必ずインにつくということ。ここでインにつけないと、立ち上がりのラインがきつくなってアクセルが踏めなくなるからね。

 S字ひとつ目は軽いブレーキングで進入しよう。左側の縁石にタイヤを乗せて、ショートカット気味に走り抜ける。そしてすかさずアクセルオン。2コ目の右コーナー手前でも軽くブレーキング。難しいのがその後の3つ目の左コーナー。ここへのアプローチは、2コ目の右を抜けた後はコースの真ん中あたりから左にステアする。そして左側の縁石には比較的長めにつく。S字全体は登り坂なので、アクセルを戻すとすぐ失速してしまう。なるべくアクセルを踏んでいくことが攻略のポイントだ。

 続く逆バンクは、多くのドライバーが数々のドラマを演じてきた有名な場所だ。ここは他のコーナーよりもバンク角が少なくアウト側にクルマがはらんでしまうことが多く、コースアウト、クラッシュも多発する箇所だ。アンダーステアやオーバーステアが出やすく、スピードコントロールが難しい。進入では軽くブレーキングして、クルマをイン側にぴたりとつける。アクセルを踏みたいのをこらえて、向きがしっかり変わってからオンするように。そして次のダンロップコーナーへの進入を考えて、コース右側にラインをとりながら立ち上がっていこう。

 ダンロップコーナーを全開のまま曲がれるクルマは少ない。アクセルをハーフまで戻して、ノーズをイン側に向けよう。2コーナーの立ち上がりからここまでずっと3速のままだが、ここで吹け上がったら4速にシフトアップ。登り坂で、かつコーナリングしながらのシフトなので、正確なライン取りとしっかりとしたステアワークが必要だ。ウェットの時は外へ外へとはらみがち。路面がスリッピーな時は要注意。アクセルコントロールでクルマの動きを落ち着かせよう。

 デグナー1コ目は、ブレーキングで4速から3速に落としながら、ステアリングをスパッと右に切る。ここは勇気のいるコーナーだけど、思い切って飛び込めるコーナーでもある。ブレーキングでなるべく向きを変えて、すぐアクセルオン。1つ目の進入では必要ないが、2つ目はハードブレーキングが必要。車速をしっかり落としつつ、3速のままか、もしくは2速にシフトダウン。立ち上がりでアウト側の縁石を乗り越えやすいので注意しよう。スピードコントロールが必要なコーナーだ。ギヤは3、4速へ。


 ヘアピンはその進入手前がずっと右に回りこんでいて、横Gがかかったままなので難しい。アウト・イン・アウトのラインを取ろうとすると、かなり手前からブレーキングする必要がある。ラインは捨てて進入スピードを重視する場合は、ミドル・イン・アウトのラインになる。ここは鈴鹿サーキットのなかでもっとも速度の低いコーナーで、しっかりと減速することが必要だ。2速で回り、立ち上がったら3、4、5速へとシフトアップ。この先の200Rは、クルマの調子が良ければ全開は可能。ただし雨の時はリスクが高い。ここはどこを走ったらいいのか分からないくらい長く続くコーナーだけど、ステアリングがなるべく真直ぐになり、なおかつ最終的にスプーンの進入で直進状態になるラインを選ぶのがいいだろう。

 スプーンの進入は、フルブレーキングでスピードをしっかりと落として3速にシフトダウン。ひとつ目のインをしっかりとった後アクセルオンしてアウトにはらむ。そしてまたブレーキング。この2コ目のブレーキングは向きを変えるためで、1つ目は車速を落とすためのものだ。2つ目は意外に逆バンっぽく曲がりにくく、インを長めにとる方が得策。立ち上がりはしっかりとトラクションをかけること。

 バックストレートは、鈴鹿のなかでは一番車速が乗る所だ。スプーンを立ち上がった後、3、4、5速とシフトアップしていく。西コースピット手前で、イン、ミドル、アウトと人によってさまざまなラインを取るが、おそらくタイム的には変わらないと思う。ちなみにボクは最短距離になるイン側を通る。

 130Rへはアウト目一杯から、ブレーキングしつつ4速にシフトダウン。進入は狭いけど出口は広いイメージなため、調子に乗るとアウト側に飛び出すからあまり無理しない方がいい。ブレーキは残さず、早めにアクセルオンする。角度が浅いコーナーなので、早くブレーキを終わらせ、アクセルオンで抜けていくようなコーナーだ。

 シケインはコーナーの始まりが視覚的にわからないので、周りの景色などでブレーキングポイントを覚えることから始めよう。4、または5速からブレーキングして2速に落とし、1コ目はなるべくインカットする感じで走る。2つ目は手前でアクセルを戻して向きを変え、アクセルオンしながら抜けていくようにする。ここでアクセルを全開に早くできればできるほど、その先の車速が伸びる。

 鈴鹿サーキットは、路面のグリップは比較的高いコース。また立体交差があるため左コーナーと右コーナーの数がほぼ一緒で、タイヤも左右均等に減っていく。ウェットの時にコースを横切る「川」がいくつかできやすい箇所があるので、足をすくわれないように注意しよう。
 ここ鈴鹿は、1コーナーや130Rなどの超ハイスピードコーナーもあれば、S字や逆バンクなどのテクニカルなコーナー、そして低速コーナーであるヘアピンと、速く走るためのコーナーをすべて備えたサーキット。ゆえに「鈴鹿を制する者はすべてのサーキットを制する」といわれるくらいエキサイティングなサーキットだ。自分のものにするのはとても難しく、時間もかかる。ボクはここを得意としてるけれども、「完璧な周」と言えるものが他のコースよりも少ない。みんなにもぜひ鈴鹿の楽しさと難しさを体験してもらいたいね。


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