第18回 TIサーキット英田

山野哲也 (ジムカーナ&レーシングドライバー)

 岡山県のほぼ中心に位置するTIサーキット英田は、山間部に造られたサーキット。中国自動車道の美作I.C.または山陽自動車道・和気I.C.からおよそ30分くらい。鈴鹿以外で唯一F1が開催されたサーキットでもある。GTやS耐をはじめとしたプロドライバーから、走行会や草レースを楽しむアマチュアドライバーまで、広い層に人気のあるコースだ。
 フラットな部分が少なく、常に登りや下りの傾斜がついているのが特徴。2~3速でのコーナリングが中心で、かなりドラテクを必要とするサーキットでもある。国内の本格的サーキットのどこよりも近い位置から走っているクルマを見ることができ、プロのテクニックを思う存分堪能できることも魅力のひとつだ。

 メインストレートは4速全開。1コーナーに向けては3%の下り勾配になっている。フルブレーキングのあと、3速にシフトダウンして、アウト目一杯からステアリングを切る。CPまでは通常どおりアウト・インのラインだけど、立ち上がりのアウトはクルマ1台分あけておいた方がいいだろう。なぜなら次に高速左コーナーであるウイリアムズコーナーが待ち構えていて、1コーナーの出口でアウトまで行ってしまうと、ウイリアムズコーナーの進入がきつくなるからだ。ここ1コーナーは、アンダーステアが出やすいので注意しよう。アンダーを出してしまうと、その次のウイリアムズコーナーがさらにきつくなってしまうからね。

 ウイリアムズコーナーは、TIの中ではもっとも難しいコーナーだ。ブラインドで先が見えないこと、CP手前あたりにギャップがあること、そしてさらにバンク角が少なく逆バンクっぽいことが理由にあげられる。また速度は100km/h以上出るハイスピードコーナーであることからも、高度なドラテクが要求されることがわかるだろう。進入はアウト側クルマ1台分あけたところから、ギャップに足を取られないように慎重に走ろう。CPはゾーンとして捉え、比較的長くイン側をトレースする。アンダーステア、オーバーステアのどちらも出さないように注意しよう。コーナー後半も逆バンクっぽくなっていて、クルマがアウト側にはらんでしまいがちで、出口の縁石は乗ったりまたいだりするとリスクが高いぞ。コーナリングスピードは高めながらも、トラクションをしっかりかけてクルマを前に、どちらかというと安全に走り抜けることが大事。シフトは3速になる。

 モスSコーナーは、コーナリングとは考えずになるべく真直ぐ最短距離を通る。横Gをかけないようにしながらアクセルは全開だ。クルマによって違うが、だいたいゆるいS字にさしかかったあたりで4速にシフトアップする。

 続くアトウッドカーブへは、アウト目一杯からフルブレーキングして3速にシフトダウン。ここはクルマの性格によって走り方が2種類ある。インに長くつく走り方と、CPは短くついてそのあとコースの真ん中あたりを立ち上がって行く方法だ。直線が速く、コーナリングが苦手なクルマは前者、その逆は後者になる。コーナー形状がブレーキング区間は下りで、コーナーリングの途中から登りになる。ここはクルマの挙動を乱しやすく、横Gも結構かかる。次がストレートだから早く全開にしたいところだけど、あせったあまり早めにアクセルを開けるとトラクションが逃げかねない。攻めて走りたいけど、ていねいに走った方が次のストレートのスピードの乗りもいい。コーナー後半にギャップが2つほどあり、ステアリングを取られたりトラクションが抜けたりするから注意しよう。立ち上がってから4速までシフトアップ。

 バックストレッチはギヤは5速まで入り、速いクルマだと200km/hオーバーになる。ここでは、その先のヘアピンの進入で真直ぐブレーキングできるようにラインを描こう。つまり一度センターに寄り、再度アウトにはらんでいく感じでブレーキングすることになる。


 ヘアピンは、超フルブレーキング!! ステアリングは真直ぐの状態でブレーキングし、曲がれる速度までがっちり落とそう。だいたい60km/hまで落とさないと曲がれない。かなりの減速が必要だ。ギヤは2速まで落とし、インはしっかり取る。立ち上がってすぐのレボルバーコーナーに備え、立ち上がりのアウトはあまりはらまない方がいいだろう。アウト・イン・ミドルのラインで、トラクションはしっかりかけて脱出する。

 レボルバーコーナーへは、2速のまま、あるいは3速にシフトアップしてと、クルマによって進入する時のギヤが違う。アウト目一杯からイン側の縁石をナメてなるべく早めにアクセルオン。進入で多めの舵角を与え、早めにステアリングを戻しながら下りの加速体勢にもっていく。出口ではアクセルを踏みすぎてアウトにはらまないようにしよう。

 パイパーコーナーは、3速で進入。アウトで一瞬ブレーキングしたあと、ステアリングをスパッと切り一瞬で向きを変える。ここは進入でオーバー、立ち上がりでアンダーが出やすいので、クルマの挙動の乱れに注意することが必要。スピードはそほど高くはないけど、クルマを暴れさせないためにも、インもアウトも縁石には乗せない方が無難だろう。とくにこの先が登りになっているので、少しでも失速させるとタイムに大きく影響してしまう。立ち上がったら4速にシフトアップ。

 レッドマンコーナーは、登り勾配が結構きついためクルマは比較的止まりやすい。早めにインについて、CPはゾーンとして捉えた方が速い。直後にホブスコーナーが控えているので、アウト・イン・ミドルのラインを取ろう。ギヤは2速。

 ホブスコーナーへは、レッドマンコーナーからの続きでラインはコースの真ん中、あるいはややアウト側からの進入となる。ここでアウト目一杯取ってもあまりタイムは変わらない。進入はアンダーが出やすいコーナーなので、フロントタイヤはしっかりと接地させよう。立ち上がりではリヤがスライドしやすいから、トラクションを効率よくかけることを意識して、3速にシフトアップ。

 マイクナイトコーナーはかなりエキサイティング。全開で行けるか行けないかぎりぎりのところだ。一瞬のアクセルオフでスパッと向きを変えて、即座にアクセルオンしてクリアするのがベストだろう。ギヤは3速のままになる。

 最終コーナーは意外に奥が深い。ここは前半でアンダー、後半でオーバーが出やすい。そのためしっかりとブレーキングしてフロントに荷重を乗せ、CPを奥にするイメージで進入する。CP以降はアクセルオンが早すぎると、立ち上がりで縁石を乗り越える可能性がある。スピードは抑え気味でもいいから全開にできるポイントを手前にしよう。脱出したあとに4速にシフトアップ。

 ここTIの路面はよく、コーナーが多い分タイヤのショルダーに負担がかかるサーキットだ。かなりツイスティーなコースレイアウトで、アクセルオンしたかと思うとすぐブレーキングと、リズム感も問われる。そのためコーナリングテクニックが光るサーキットともいえ、それが得意なドライバーが脚光を浴びるサーキットだ。

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