第9回 那須モータースポーツランド

山野哲也 (ジムカーナ&レーシングドライバー)

 那須モータースポーツランドは、東北自動車道の那須I.C.から約15分、西那須野・塩原I.C.から約30分の位置にある。都心からだとツインリンクもてぎや日光サーキットよりはちょっと足を伸ばす感じになるけど、それでも十二分に楽しめるサーキットなんだ。パドックからコースの半分ぐらいをながめることができて、見る側も楽しい。ミニサーキットながらトイレもそこそこきれいだし、芝生や木々の緑がきれいで、さわやかな気分になれるんだ。きっと彼女も楽しめるはずだよ。ピットも広くて、雨の日なんかは安心だ。
 コースは2~3速が中心。道幅は7.5~12mと、あんまり広くはないけれど、気持ちよく走れるサーキット。実はセーフティマージンはちょっと少なめだけれど、不思議なくらい開放感があって、なぜか安心して攻められちゃうんだよね。ピットロードはせまく、コースに合流する手前の右コーナーにはちょっと角張っている縁石があるから、ここにタイヤを引っかけないように注意しよう。

 ストレートから1コーナーへは、3速全開からフルブレーキング。だいたい50m看板のあたりからブレーキングし始めて、2速に落とそう。1コーナーは、実は思ったより奥が深い。しかも18Rとヘアピンなみのキツさだ。パッと見直角コーナーに見えるけど、実際はもっと鋭角に曲がっている。つまりそれだけ立ち上がりでアウトにはらんだり、飛び出したりしやすいんだ。そうならないためには、CPを奥に取ることがうまく走るポイント。そうすることで、立ち上がり重視のコーナリングができるからね。

 その後はミニサーキットとは思えないほど長いストレートがひかえてる。ここは、インテグラ タイプRやS2000、さらにはランサーやインプレッサのようなクロスミッションのクルマだと4速に入る。その直後にあるのはつばめ返しコーナー。形状はいわゆるシケインなんだけど、ちょっと珍しいシケインなんだ。というのも、一般的なシケインは、まさに小さいS字があるだけ。しかもその先はストレートという場合が多いから進入は控えめで立ち上がり重視。だけど、ここはつばめ返しの直後にシケインよりRの長い右コーナーが直後に待っている。ここはシケイン後の次のコーナーが目の前だから立ち上がり重視する必要がない。つまり突っ込み重視で進入。シケインを含み次の15R~20Rまでブレーキングのまま行ければベストだ。シフトは2速でクリアしよう。
 次の15R~20Rでは、前述の通りつばめ返しコーナーでのブレーキを続けたまま進入。しっかりインをキープし、15R、20Rとも縁石に右フロントタイヤを常に乗せておく感じ。CPをゾーンとして捉え、立ち上がりではステアリングをしっかりニュートラルに戻して立ち上がろう。そして3速にシフトアップ。


 ゆるい左コーナーを抜けたあとは、ブラインドになってる右35Rコーナーがある。ここは、右側が丘になっていて、まるでワインディングを走っているような雰囲気なんだ。フル制動のあとにブレーキを残しながら進入し、3から2速にシフトダウン。イン側の縁石に乗ったあたりから一瞬全開にしてまっすぐ次のヘアピンに向かおう。ここは、パドックのちょうど正面に出てくる感じで、まるでWRCのギャラリーコーナーのような雰囲気なんだ。だからちょっとリヤを流しながら入っていくと、カッコもいいし、タイムもいい。ライバルに差をつける格好のシチュエーションだぞ。

 次のヘアピンの進入は、ラインをアウトにとらずにまっすぐインに向かう。その方が距離が短く、ステアリングを切ってない分ブレーキングも奥まで突っ込めるからね。だからアウトから入るよりタイムも短縮できるはずなんだ。そしてしっかりと速度を落とそう。コーナリングスピードを重視するあまり充分な減速をしないと、立ち上がりでアウトにはらんでしまう可能性があるからね。インをがっちりキープして、脱出重視でいこう。次の24Rの左コーナーをヘアピンの舵角そのままで行ければベストだ。一瞬のアクセルオフのあとの右30Rはアクセルオンを早めにして最終コーナーへ向かう。ヘアピンを立ち上がったあとは、すごくリズムが大事。一瞬でもタイミングがずれると、アクセル全開率が下がったり、CPをはずしたりするから集中力が問われるね。

 最終コーナーの進入は、アクセル全開時間をなるべく多く取りたいんだけど、インを逃さないためにもブレーキングは思ったよりも早めになる。ここはアンダーが出やすいので、しっかり車速を落としてやることが大事だね。ストロークのある足だったらイン側の縁石に乗せるけど、硬い足回りだったら避けた方がクルマが暴れない。立ち上がったあと、コントロールタワー前で3速に入るならバッチリだ。ここで3速に入れる前は、右35Rコーナーで2速に落としたあとはずっとホールド状態になる。

 那須モータースポーツランドは、ミニサーキットの割には開放感があって、走っててとても気持ちがいいね。ストレートではそこそこスピードが出るし、突っ込み重視のコーナーもあれば、立ち上がり重視、リズム重視のところもあったりで変化に富んでいる。当然タイヤに対してもタテ方向とヨコ方向の性能、さらにはレスポンスも問われ、その良し悪しがわかりやすいサーキットだ。どちらかというと大排気量より小排気量のクルマの方が向いているコースだけど、本格的なサーキットデビューをする前に走っておくのもいいかもね。サーキットによっては、そこのスペシャリストみたいな人が、ピリピリムードで走ってて、ビギナーにはちょっと気が引けたりするところもある。でもここは大丈夫。まわりの参加者に気兼ねなく走れる、初心者に対してやさしいサーキットなんだ。走っている人も、比較的譲る人譲られるの関係がよくとれていて、みんなマナーがいいのも特徴だ。
 タイムも、申し込めば計測機を貸してくれて、走っている時に自分のタイムが表示されリアルタイムで確認できるんだ。それもコーナーの進入という忙しいところではなく、1コーナーを立ち上がったあとというもっとも見やすいところに表示される。そういうところからも、とっても親切なサーキットといえるんじゃないかな。助手席のパートナーに走っているシーンをカメラやビデオでとってもらいつつ、サーキット走行をエンジョイしよう。

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