第1回 筑波サーキット <その2>

山野哲也 (ジムカーナ&レーシングドライバー)

 さて、第1ヘアピンの進入に合わせる感じでS字を抜けた後は、アウト側の縁石の上、もしくはその手前あたりからブレーキングに入る。ここは目の前に観客席があってみんなが見てるから(?)つい力が入って、アンダーステアが出やすいので、フロントタイヤがヨコ方向にちゃんとグリップしているかよ~く感じ取りながら走ろう。
 ここの一般的な進入ラインはイン、もしくはミドルくらいから入って、→イン→アウトって出るんだけど、ボクの場合はアウトから入って、→イン→ミドルと抜ける。その理由は、その方が立ち上がりのトラクションがいいからなんだ。900Kgくらいのクルマになるとイン・イン・ミドルで回れちゃったりするので、こういうクルマの場合はアウトから進入する必要はないよ。あと、このコーナーは全体的にカントがついてるんだけど、立ち上がりのアウト側が平らになってるんで、あんまり外にふくらむとどんどんアウト側に流れてしまって、なかなかトラクションが得られなくなってしまうっていうのも理由のひとつ。これはタイヤもタレやすくなるという弊害も生むんだ。ここはほとんどのクルマが2速でクリアして、次のダンロップコーナー手前で3速にシフトアップする。

 ダンロップコーナーは、ボクがいろんなところでいってる「パキ切り」が炸裂するコーナー。「パキ切り」とは、瞬時に向きをスパッと変える山野流テクなんだ。アクセル全開から一瞬のアクセルオフもしくはチョンとブレーキを踏んで前荷重にしてやり、フロントタイヤのグリップを確保。と同時に素早くステアリングを切ると、クルマがスパッと曲がってくれるから、その瞬間にステアリングを戻して全開。クルマの向きが変わらない場合は、車速が足りなかったり、フロントタイヤのグリップ不足(前荷重になっていないorしすぎ)だったりするのが原因かな。詳しくは「Enjoy! スポーツドライビング 第14回 荷重移動」のページを見てね。
 ここは3速にシフトアップしたあとの比較的高いスピード域で、瞬間的に横Gが発生することからビギナーにとっては恐怖感を覚えるし、実際スピンも多いので慎重に。とくに直前の1ヘアでの立ち上がりで、いつまでも右Gを残していると、フェイントのようにダンロップコーナーに進入する形になっちゃうので、よけいスピンしやすくなるんだ。そういう意味もあって、1ヘアはなるべくミドルで立ち上がるようにしてるってわけ。

 クリッピングポイント(以下CP)の縁石は、サスペンションがタイヤの動きを吸収してくれるんだったら積極的に使おう。ただし、乗ると跳ねてしまう足であればやめた方がいいぞ。さらに立ち上がりのアウト側も、ダートにタイヤを落とすと即スピンしたり、とても不安定になるので気をつけよう。

 「パキ切り」でダンロップコーナーをクリアした後は、3速全開のまましばらくアウト側をナメる。つまり、続く左80Rをイン・イン・アウトのラインで走る感じ。あまりステアリングを切りすぎると抵抗になって速度の伸びがにぶるので、なるべくゆるやかな弧を描くように自然にはらむ感じで車速を乗せよう。アウト側の縁石は、遠まわりになるしグラベルが狭くリスキーなので乗らない。ウェットの場合はとくに注意し、ドライの時でも気持ち的にはアウト側にクルマ1台分残そう。ここはコースアウトしたら即スポンジバリアに激突&クラッシュになっちゃうからね。



 第2ヘアピンへは2速で進入。ここの一番のポイントは立ち上がり。なぜならその先に長い裏ストレートが続いてて、ここの脱出スピードの高さが最終コーナー手前の速度に大きく影響してくるからね。だからCPも奥にとって立ち上がり重視でいこう。イメージ的にはアウト・ミドル・イン・イン・アウトって感じだよ。アクセルもガバッと踏むとタイヤが空転して横方向にクルマがふくらむばかりで前に進んでくれないから、「じわああああ~」って感じでね。
 さて、裏ストレートはひたすら全開でいき、いよいよ最終コーナー。筑波で一番Rが大きく、ビギナーにはちょっと怖いかもね。そんな場合はインベタ気味で走ることをオススメするよ。慣れてきたら徐々にいろんなラインにトライしてみよう。

 最終コーナーは、入り口が100Rで出口が90Rと、若干立ち上がりがきつくなってるんだ。だからいわゆるアウト・イン・アウトでは走らないのがフツー。一般的なラインは、アウトから直線的に進入し、一瞬インをかすめた後、再びコース中央付近にふくらみ、そこからまたインに向かうというライン。CPをふたつとるってわけ。

 でも山野流はちょっと違ってて、より立ち上がりのトラクションを重視したラインをとるんだ。目一杯アウトから進入し、徐々にコース中央付近にラインを変えて、最終的にはちょうどイン側の縁石が終わるあたりにCPをとって全開で立ち上がる感じ。前半はリヤのスライドと相談しながら向きを調整し、ラインをトレースする「コーナリング」、後半はホームストレートに向けてどれだけスピードを乗せられるかという「トラクション」重視の操作って感じかな。まさにタイヤのヨコとタテの力を、前半と後半で使い分けてる状態。シフトは3、もしくは4速。CPについた後は、ホームストレートアウト側の、やや1コーナー寄りの縁石目指して立ち上がろう。ただし、他の縁石同様にウェットの時は乗らないようにしよう。

 筑波サーキットでタイムアップするコツは、コーナリングはなるべく短かめに終わらせて、いかにタイヤのタテ方向の力を使うかってことにかかってくる。進入のブレーキングと、立ち上がりのトラクションを常に意識しながら走ることがポイントだよ。1ヘアの立ち上がりで、アウト側のダートに落ちるようではキミのテクはまだまだだぞ!! なおここのラップタイムは、いろんな雑誌やビデオで、それもあらゆるクルマで走ったタイムが出てるから、ぜひ参考に、そして目標にして走ってもらいたいな。

ここは距離が短いサーキットではあるけれど、奥深くってボクはとっても好きなサーキットなんだ。

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